基礎方程式の無次元化 無次元化まじでぱねぇ

非圧縮性流体

非圧縮性流体力学のをBoussinesq近似した方程式はテンソル表記で下のように表せます。

$$
\begin{align}
&質量保存則 :\hspace{ 30pt } \frac{ \partial u_i }{ \partial x_i } = 0 \tag{1} \label{eq:scale-factor-1} \\\\
&運動量保存則:\hspace{ 24pt } \frac{ \partial u_i }{ \partial t} + \frac{ \partial u_i u_j }{ \partial x_j} = -\frac{1}{\rho} \frac{\partial P}{\partial x_i} + \nu \frac{\partial^2 u_i}{\partial x_j^2} + g\beta \Delta T \delta_{i 3} \tag{2} \label{eq:scale-factor-2} \qquad \\\\
&熱エネルギー保存則: \hspace{ 3pt }\frac{ \partial T }{ \partial t} + \frac{ \partial T u_j }{ \partial x_j} = \alpha \frac{\partial^2 T}{\partial x_j^2} + S \tag{3} \label{eq:scale-factor-3}
\end{align}
$$
ベクトル表記だとこうでした。
$$
\begin{align}
&質量保存則 :\hspace{ 30pt } \nabla \cdot \mathbf{V} = 0  \\\\
&運動量保存則:\hspace{ 24pt } \frac{ \partial \mathbf{V}}{ \partial t} + (\mathbf{V} \cdot \nabla) \mathbf{V} = -\frac{1}{\rho} \nabla p + \nu \nabla^2 \mathbf{V} –  \beta \Delta T \mathbf{g} \qquad \\\\
&熱エネルギー保存則: \hspace{ 3pt }\frac{ \partial T }{ \partial t} + (\mathbf{V} \cdot \nabla) T = \alpha \nabla^2 T + S \tag{13} \label{eq:scale-factor-13}
\end{align}
$$

 

これらの方程式中の物理量は単位を含む量です。もちろんこのまま解いても差し支えないし、実際にプログラムを書いてシミュレーションを行う場合こっちを使うことも多いと思います。しかし、色々と便利な性質があり、無次元化という操作を行うことが多いです。そこで、無次元化したNavier-Stocks方程式を導出していきます。

 

まず、代表長さをL, 代表速度をU, 代表温度を\(\Delta T_0\)としましょう。代表長さとは解きたい対象の代表的な長さであり、例えばビルの周りの流れを解きたいのであればビルの一片の長さが代表長さとなります。ただの無次元化するための基準なので、大体のスケールがあっていれば別に長い方でも短い方でも何でも良いです。

無次元化とは、ただ、今まで10[m]とか、5[m/s]とかを使っていたものを、0.6とか、0.9といった単位を無次元にするだけの意味でしかないので、別に基準は何を使っても良いのですが、0~1くらいの値にするのがやりやすいので代表的な長さなどを使います。代表速度も同じようなものです。


代表温度は、\(\delta T_0\)を、(最高温度 – 最低温度)にすると、大体基準化温度が0~1になるのでやりやすいと思います。普通はこういったものを使います。

無次元化した方程式を使う場合は、単純に出てきた値を再度無次元化した式から、実際の値に戻すだけですので、別にどんな値を使っても一応大丈夫です。

この時、無次元化した物理量は、

$$
\begin{align}
x_i ^{\ast} = \frac{x_i}{L}, \hspace{5pt} u_i^{\ast} = \frac{u_i}{U} ,
\hspace{5pt} t ^{\ast} = \frac{t}{\frac{L}{U}}, P ^{\ast} = \frac{P}{\rho U^2},
\Delta T^{\ast} = \frac{\Delta T}{\Delta T_0} \tag{4} \label{eq:scale-factor-4}
\end{align}
$$

となっています。この\eqref{eq:scale-factor-4}を\eqref{eq:scale-factor-1}~\eqref{eq:scale-factor-3}式にブチ込んで無次元化します。圧力のところですが、これは動圧を思い出してください。なんで?って思うかもしれませんが、単位が無次元化すれば別に何を使ってもいいのです。動圧は圧力の単位でそれを2倍したものを使ってやります。無次元化に使う値に別に制約はないのですから、新たに値を作るより、速度等から作った方が確実にいいです。こうしないと綺麗になりません。

\eqref{eq:scale-factor-1}は、

$$
\begin{align}
&\frac{ \partial \frac{u_i}{U} }{ \partial \frac{x_i}{L} } \bullet \frac{U}{L} = 0 \hspace{30pt} \Leftrightarrow \hspace{30pt}
\frac{ \partial u_i^{\ast} }{ \partial x_i^{\ast} } = 0 \tag{5} \label{eq:scale-factor-5}
\end{align}
$$


\eqref{eq:scale-factor-2}は、

$$
\begin{align}
&\frac{U^2}{L} \frac{ \partial u_i^{\ast} }{ \partial t^{\ast}}+ \frac{U^2}{L} \frac{ \partial u_i^{\ast} u_j^{\ast} }{ \partial x_j^{\ast}} = -\frac{U^2}{L} \frac{\partial P^{\ast}}{\partial x_i^{\ast}} + \frac{U \nu}{L} \frac{\partial^2 u_i^{\ast}}{\partial x_j^{\ast 2}} + \Delta T_0 g\beta \Delta T^{\ast} \delta_{i 3} \\\\

\Leftrightarrow \quad &\frac{ \partial u_i^{\ast} }{ \partial t^{\ast}}+ \frac{ \partial u_i^{\ast} u_j^{\ast} }{ \partial x_j^{\ast}} = -\frac{\partial P^{\ast}}{\partial x_i^{\ast}} + \frac{\nu}{U L} \frac{\partial^2 u_i^{\ast}}{\partial x_j^{\ast 2}} + \frac{ g\beta \Delta T_0 L}{U^2} \Delta T^{\ast} \delta_{i 3} \\\\

\Leftrightarrow \quad &\frac{ \partial u_i^{\ast} }{ \partial t^{\ast}}+ \frac{ \partial u_i^{\ast} u_j^{\ast} }{ \partial x_j^{\ast}} = -\frac{\partial P^{\ast}}{\partial x_i^{\ast}} + \frac{1}{Re} \frac{\partial^2 u_i^{\ast}}{\partial x_j^{\ast 2}} + Rib \Delta T^{\ast} \delta_{i 3} \tag{6} \label{eq:scale-factor-6}
\end{align}
$$



\eqref{eq:scale-factor-3}は、

$$
\begin{align}
&\frac{\Delta T_0 U}{L}\frac{ \partial T^{\ast} }{ \partial t^{\ast}} + \frac{\Delta T_0 U}{L}\frac{ \partial T^{\ast} u_j^{\ast} }{ \partial x_j^{\ast}} = \frac{\alpha \Delta T_0}{L^2} \frac{\partial^2 T^{\ast}}{\partial x_j^{\ast 2}} + S \\\\

\Leftrightarrow \quad &\frac{ \partial T^{\ast} }{ \partial t^{\ast}} + \frac{ \partial T^{\ast} u_j^{\ast} }{ \partial x_j^{\ast}} = \frac{\alpha}{\nu} \frac{\nu}{U L} \frac{\partial^2 T^{\ast}}{\partial x_j^{\ast 2}} + S \\\\

\Leftrightarrow \quad &\frac{ \partial T^{\ast} }{ \partial t^{\ast}} + \frac{ \partial T^{\ast} u_j^{\ast} }{ \partial x_j^{\ast}} = \frac{1}{Re} \frac{1}{Pr}{L^2} \frac{\partial^2 T^{\ast}}{\partial x_j^{\ast 2}} + S

\tag{7} \label{eq:scale-factor-7}
\end{align}
$$

となり、ここで、\(Re = \large{\frac{U L}{\nu}}\), \(Rib = \large{\frac{ g\beta \Delta T_0 L}{U^2}}\), \(Pr = \large{\frac{\nu}{\alpha}}\)であり、\(Re\)はレイノルズ数、\(Rib\)はバルク・リチャードソン数(\(Ar\) アルキメデス数と書くこともある)、 \(Pr\)はプラントル数と呼ばれます。

ここで、\eqref{eq:scale-factor-6} 式を見てください。一旦、熱の話は置いといて浮力項を無視すると、元々、\(\rho\)と\(\nu\)との2つのパラメータが、\(Re\)のみに集約されています。これは何を意味するのでしょうか?まず、流れというのは、\(Re\)というパラメータのみで決まるです。また、\(Re\)は粘性項にかかっています。粘性項は分子粘性を表す項であり係数が大きければ大きいほど分子粘性が働き、流速が隣の流速に引っ張られていきます。つまり\(Re\)は流れのネバネバさを示すパラメータなのです。

レイノルズ数という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。一般にレイノルズ数が低いとネバネバした流れになり、層流という流れになりやすいです。ハチミツが流れているのをイメージしてください。レイノルズ数が高いと、サラサラした流れになり、乱流という流れになりやすいです。基本的に世の中のほとんどの流体は乱流で、イメージとしてはタバコの煙がスーッと層流で上っていった先にぐちゃぐちゃっと乱れる流れを目にします。あれが乱流です。

レイノルズ数で流れが決まるということは色々面白い考察が生まれます。\(Re = \large{\frac{U L}{\nu}}\)より、ありと人間で同じ風が吹くと人間に比べありは代表長さLのスケールが小さいので、\(Re\)は小さくなりネバネバした流れに感じるはずです。虫が簡単に飛べるのはこういった力があるのかもしれません。調べてませんが。

また、風洞実験というものの有効性がわかります。風洞実験とは実際に建物などの模型を作って、風を巨大扇風機で当てて流れを見てやったり力を見てやるというものです。煙とか色付きの気体を入れておけば流れが目で見て分かる。この時、例えば1 / 10の模型を作ったとしよう。Lが1/10になったので、単純にUを10倍にしてやれば、同じ流れが担保できることになります。

同じように飛行機とかを作るときにいきなり等身大のスケールを作る必要はないわけです。またスケールを1/100とかにしてしまい、Uを100倍にするのが辛ければ、動粘性係数\(\nu\)で調整してやればいいです。しかし、飛行機とかの場合、圧縮性が無視できなくなってしまい、圧縮性で重要なパラメータである、マッハ数(流速/音速)も調整する必要があります。なかなか難しい!

もう一つ考え方があります。例えば、建築物の都市における流れの風洞実験をしたいとします。その時、1/10の模型はでかすぎます。せめて1/200くらいにして欲しいところです。ただ、この時のレイノルズ数はいくつになるでしょうか?20℃・1気圧で空気の動粘性係数はだいたい、\({\nu} = 1.5 \times 10^{-5} [m^2/s]\)なので、L=10[m]、U=4[m/s]とすると、\(Re = 6.0 \times 10^6\)となります。すると、\(\frac{1}{Re}\)がかかる粘性項はほとんど無視できるレベルじゃないでしょうか?よって、まあいけるだろということで、スケールのでかい実験ものに対しての模型の実験は割と正しいと言えます。

ただし、熱流体になると話は別です。\(Rib = \large{\frac{ g\beta \Delta T_0 L}{U^2}}\)を調整するには、Lを1/10倍、Uを10倍にしてしまうと、1000倍もの差ができてしまいます。これを\(\Delta T_0\)で補ってやらなければいけません。つまり、今までより1000倍の温度差をつけるのである、これは流石に無理です。よってやはりシミュレーション最強説が説得力を増していきます。シミュレーションすごいですね。

 

 

 



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