2階微分と拡散項 2階微分はどこでも目にする

非圧縮性流体

2階微分の差分近似

まず、前回一階微分に対してしかやっていなかったので、2階微分に対しての差分近似から始めます。おなじみNavier-Stocks方程式を見てみると、

$$
\begin{align}
& \frac{ \partial u_i }{ \partial x_i } = 0 \tag{1} \label{eq:scale-factor-1} \\\\
& \frac{ \partial u_i }{ \partial t} + \frac{ \partial u_i u_j }{ \partial x_j} = -\frac{1}{\rho} \frac{\partial P}{\partial x_i} + \nu \frac{\partial^2 u_i}{\partial x_j^2} \tag{2} \label{eq:scale-factor-2} \qquad
\end{align}
$$

拡散項は2階微分でした。ということで、2階微分に対する差分近似を考えてみます。

まず、仮想的に上のようなメッシュを考えてみます。メッシュの中心に値が入っているという、いわゆるスタガード格子と呼ばれるものです。仮想的にそしてその中心の点に、仮想的に i+1/2、i-1/2の点があると考えます。すると、以下のように考えて、差分近似をすることができます。

$$
\begin{align}
\left.\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}\right\vert_i &= \left.\frac{\partial }{\partial x} \frac{\partial f}{\partial x}\right\vert_i \\ &=\frac{\left.\frac{\partial f}{\partial x}\right\vert_{i+1/2} +\left.\frac{\partial f}{\partial x}\right\vert_{i-1/2} }{\Delta x} \\ &= \frac{\frac{f_{i+1} – f_i}{\Delta x} + \frac{f_i – f_{i-1}}{\Delta x}}{\Delta x} \\ &=\frac{f_{i+1} – 2f_i + f_{i-1}}{\Delta x^2} \tag{3} \label{eq:scale-factor-3}
\end{align}
$$

よしいけた。1/2の部分を考えるなんて怪しげなんて思うでしょうか。こんなんじゃ納得できないぃ。という人のために、Taylor展開でやっておきます。考え方は前回と同じです。1階微分を消して、2階微分を残せばいい。

$$
\begin{align}
f_{i+1} &= f_i+\frac{\Delta x}{1!} \left.\frac{\partial f}{\partial x}\right\vert_i +\frac{\Delta x^2}{2!} \left.\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}\right\vert_i +\frac{\Delta x^3}{3!} \left.\frac{\partial^3 f}{\partial x^3}\right\vert_i+ \frac{\Delta x^4}{4!} \left.\frac{\partial^4 f}{\partial x^4}\right\vert_i + \cdots  \tag{4} \label{eq:scale-factor-4} \\\\
f_{i-1} &= f_i-\frac{\Delta x}{1!} \left.\frac{\partial f}{\partial x}\right\vert_i +\frac{\Delta x^2}{2!} \left.\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}\right\vert_i -\frac{\Delta x^3}{3!} \left.\frac{\partial^3 f}{\partial x^3}\right\vert_i +\frac{\Delta x^4}{4!} \left.\frac{\partial^4 f}{\partial x^4}\right\vert_i + \cdots  \tag{5} \label{eq:scale-factor-5}
\end{align}
$$

\eqref{eq:scale-factor-4} + \eqref{eq:scale-factor-5}をしてやると、

$$
\begin{align}
&f_{i+1} +f_{i-1} = 2f_i+ \Delta x^2 \left.\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}\right\vert_i +\frac{\Delta x^4}{12} \left.\frac{\partial^4 f}{\partial x^4}\right\vert_i + \cdots  \tag{6} \label{eq:scale-factor-6} \\\\
&\frac{ f_{i+1} -2f_i + f_{i-1}}{\Delta x^2} = \left.\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}\right\vert_i +\frac{\Delta x^2}{12} \left.\frac{\partial^4 f}{\partial x^4}\right\vert_i + \cdots  \\\\ &\frac{ f_{i+1} -2f_i + f_{i-1}}{\Delta x^2} = \left.\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}\right\vert_i + O(x^2)
\tag{7} \label{eq:scale-factor-7}
\end{align}
$$

お、最初から2次精度です。最初から2次精度であり、次は4次精度なので、まあほとんどこの中心差分近似が使われるが、一応他にもあります。導き方は前回の記事の3次精度や4次精度と同じなので、暇だったらやってみるといいかもしれません。

$$
\begin{align}
&\frac{\partial^2 f}{\partial x^2} =\frac{ f_{i+2} -2f_{i-1} + f_i}{\Delta x^2} \tag{1次精度} \label{eq:scale-factor-8} \\\\
&\frac{\partial^2 f}{\partial x^2} =\frac{ f_{i+1} -2f_i + f_{i-1}}{\Delta x^2} \tag{2次精度} \label{eq:scale-factor-9} \\\\
&\frac{\partial^2 f}{\partial x^2} =\frac{-f_{i+2}+16f_{i+1} -30f_i + 16f_{i-1} – f_{i-2}}{12 \Delta x^2} \tag{4次精度} \label{eq:scale-factor-10}
\end{align}
$$

 


2階微分と拡散

2階の偏微分というのは、しょっちゅう目にすると思います。2階偏微分を目にしない日はないと言っていいくらいです。例えば、こういうやつです。

$$
\begin{align}
&\bigtriangleup u = f \\\\
&\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} +\frac{\partial^2 u}{\partial y^2} +\frac{\partial^2 u}{\partial z^2} = f \tag{11} \label{eq:scale-factor-11}
\end{align}
$$

これはみんな大好きポアソン方程式だー。圧力のとこで出できます。電磁気でもひたすら見かけます。右辺のfが0になっているのがラプラス方程式です。これらは基本的に値が広がっていくような現象を表しています。ポアソン方程式は電磁気のイメージがあると思いますが、右辺の値が湧き出して広がっていくイメージで、ラプラス方程式は右辺が0なので、均一に広がって馴染んでいくイメージです。

他にも、熱の拡散方程式なんてがあります。これも2階微分です。なぜか、どれも拡散っぽいイメージがあります。なぜだろう?波動方程式なんかはちょっと違うイメージですが。

熱の拡散方程式を考えてみましょう。こやつが一番わかりやすいです。物理現象としては、個体の熱が隣に伝わっていって、均一になっていくというものです。

$$
\begin{align}
&\frac{\partial T}{\partial t} = \alpha \frac{\partial^2 T}{\partial x_j^2} \tag{12} \label{eq:scale-factor-12}
\end{align}
$$

右辺はベクトル的に書けば、divであり、以下のように縮約を取ることに注意しなければならなりません。

$$
\begin{align}
&\frac{\partial^2 T}{\partial x_j^2} = \frac{\partial}{\partial x_j} \frac{\partial T}{\partial x_j} = \frac{\partial^2 T}{\partial x_1^2} + \frac{\partial^2 T}{\partial x_2^2} + \frac{\partial^2 T}{\partial x_3^2} \tag{13} \label{eq:scale-factor-13}
\end{align}
$$

これは、まずフーリエの法則から導き出せます。フーリエの法則とは、次のようなものです。

$$
\begin{align}
& J = -\alpha \frac{\partial T}{\partial x_i} \tag{14} \label{eq:scale-factor-14}
\end{align}
$$

Jは熱流速密度[W/m2]、αは熱伝導率[W/(m・K)]です。この法則は何を意味しているか分かるでしょうか?意味しているのは非常に簡単なことです。簡単の為に1次元で考えてみます。つまり、

$$
\begin{align}
& J = -\alpha \frac{\partial T}{\partial x} \tag{15} \label{eq:scale-factor-15}
\end{align}
$$

この式が意味していることは簡単です。位置によって熱の勾配があると、勾配の逆方向に熱が流れ込みます。つまりは、熱が高い方から低い方へ移動していくということです。\(x_0\)の温度よりも、\(x_0+dx\)の温度の方が高い場合、\(\frac{\partial T}{\partial x}\)は正の値になり、この勾配の逆方向に熱伝導率をかけた割合で熱が流入するということになります。ただそれだけのことです。

次に、次図のような微小領域が蓄える熱量を考えてみます。

この微小空間の熱収支を考えてみます。

流入量 : \( J_{in} = +\alpha \frac{\partial T+\Delta T}{\partial x_0 + \Delta x} \)
流出量 : \(J_{out} = -\alpha \frac{\partial T}{\partial x_0}\)

となり、収支は、

$$
\begin{align}
J\_{in}-J\_{out} &=\alpha \frac{\partial (T+\Delta T)}{\partial (x_0 + \Delta x)} -\alpha \frac{\partial T}{\partial x_0} \\\\
&= \alpha \left[ \frac{\partial (T+\Delta T)}{\partial (x_0 + \Delta x)} – \frac{\partial T}{\partial x_0} \right]\\\\
&=  \alpha \left[ \frac{\partial T}{\partial (x_0 + \Delta x)} + \frac{\partial \Delta T}{\partial (x_0 + \Delta x)}- \frac{\partial T}{\partial x_0} \right] \\\\ &= \displaystyle \lim_{\Delta x \to 0} \frac{\partial \Delta T}{\partial (x_0+\Delta x)} \\\\ &= \frac{\partial^2 T}{\partial x^2} \tag{16} \label{eq:scale-factor-16}
\end{align}
$$

 

のようになります。つまり、何が言いたいかというと、熱伝導において空間の2階微分が示すものはどれだけ熱が残るのかということを示しています。そして、熱の収支こそがその場所の熱の変化量で、それを個々に考えていったものが熱拡散方程式というわけです。元々熱はフーリエの法則により伝わるんだけど、一瞬で伝わるわけでもないし、じゃあどういう風に伝わっていくの?というのを示すのが熱拡散方程式というわけです。

流体の拡散項(=粘性項)も同じで、流体は速度差があると分子粘性によって速度が渡されていき、つまり運動量が熱のように高い方から低い方へ伝わっていくような現象が起こり、拡散していくのです。それを表すのが拡散項であり、拡散項は別名で粘性項と呼ばれます。熱の場合は係数が熱伝導率でしたが、流体の場合は動粘性係数になります。


熱伝導率の正負

余談ではありますが、熱伝導率\(\alpha\)は必ず正だということを強調しておきます。これは物理現象を考えれば分かることで、もし熱伝導率が負だと、熱が低い方から高い方へと流れていくことになります。当たり前のことですが、認識だけしておきましょう。

 



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