流体の質量保存則 実にかんたん

非圧縮性流体

考えるべき流体の規模

まず、流体の質量保存則とはどういったものになるかを考えてみます。一番シンプルなものは、下のようなものでしょう。

室内を考えたときに、入ってくる量と出て行く量が等しい。これが、一番シンプルに考える質量保存則のはずです。ただ、流体の場合、そんな全体を考えててもしょうがありません。流体は室内の各場所の情報を知りたいし、場所ごとに質量保存則は満たされてなければならないと考えられます。ではどこまで細かくしていったらいいのでしょうか?

究極は点です。じゃあ、点を考えるのでしょうか?どのレベルまで細かく考えたらいいのでしょうか?

シンプルに考えると、分子の大きさのレベルはどうでしょうか?これだとどうなるでしょう?

これは、必要以上に細かくしすぎです。質量が拡散してしまうレベルです。原子や分子の動きまで考慮しなければなりません。この場合、流体を「連続体」として扱うことができません。連続体とは、数学的定義だと、少なくとも2点を含み,コンパクトで,連結である距離空間のことをいいます。連続な物体みたいなものです。連続体と見なせない細かさのレベルの流体を「希薄流体」と言います。希薄流体は化学反応や材料の計算など、分子レベルの挙動を解析する時に使います。

じゃあ、「流体」として扱うのはどのレベルか。それは、ズバリ・・・平均自由工程以上のレベルです。

平均自由工程とは、すごくかんたんに言うと、分子が自由に運動して一様に分散するくらいの距離です。分子が数個入るくらい。また、流れが連続体とみなせるかどうかを示す無次元数をクヌッセン数と言います。これらはここでは詳しく扱いませんが、調べれば出てくると思うので調べてみてください。

平均自由工程くらいのものであれば、流体の密度は均質と考えられます。これくらいの流体を考えます。また、この範囲の流体を失点に近い流体根として考えます。

また、法則はガリレイ不変則より移動座標系でも変わりません。


流体の質量保存則

 

上のような座標と微小体積を考えます。知っているとは思いますが、このような座標系を直交座標、デカルト座標、カーテシアン座標などといったりします。

この微小体積における質量保存則を考えていきます。質量保存則では、流体の入ってくる質量と出て行く質量が等しければ言い訳です。ここで、微小体積中の流体の質量が変化するとしたら、どのような量が変化するかを考えます。

微小体積中の流体の質量が変化するとしたら・・・

$$
\begin{align}
\frac{ \partial \rho \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3}{ \partial t} = (原因)  \tag{1} \label{eq:scale-factor-1} \\\\
\end{align}
$$

となっているはずです。これはいいでしょうか?。\(\rho\)は密度です。質量の時間変化を考えているだけです。

それは何によって変化するでしょうか?もちろん、流入と流出ですね。そこで、\(x_1\)方向に流入と流出がある場合を考えてみます。まず、微小体積の左の面から密度\(\rho\)で速度\(u_1\)で入ってくるとします。この時、右面の密度と流速はどのように表せるでしょうか?

Taylor展開を考えてみます。Taylor展開とは、ある点xの値と、微分係数がある時に、x+Δxの地点の値を近似的に出す手法とも言えます。Taylor展開はこれです。

$$
\begin{align}
f(x + \Delta x) &= f(x)+\frac{\Delta x}{1!} \left.\frac{\partial f}{\partial x}\right\vert_x +\frac{\Delta x^2}{2!} \left.\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}\right\vert_x +\frac{\Delta x^3}{3!} \left.\frac{\partial^3 f}{\partial x^3}\right\vert_x + \cdots  \tag{2} \label{eq:scale-factor-2}
\end{align}
$$

これの第一次近似までを考えてみます。即ち、2階微分以降の項を切り捨てます。微小体積を考えているので、この思想は大丈夫です。この場合、右の面の密度と流速は下図のように、密度\(\rho +\Delta x_1 \frac{\partial \rho}{\partial x_1}\)で速度\(u_1 +\Delta x_1 \frac{\partial u_1}{\partial x_1}\)になるかと思います。

この時の質量変化を考えてみましょう。仮に、質量変化を\(M_{x_1}\)とし、左の面から入ってくる質量変化を\(M_{x_1 左}\)とし、右の面から出て行く質量変化を\(M_{x_1 右}\)とします。これらの単位はkg/sで、質量の時間変化を考えています。速度と面の大きさと密度を掛けることで、時間変化になります。すると、

$$
\begin{align}
M_{x_1} &= M_{x_1 左} – M_{x_1 右} \\\\
&= \rho u_1  \Delta x_2 \Delta x_3 – ( \rho +\Delta x_1 \frac{\partial \rho}{\partial x_1} ) ( u_1 +\Delta x_1 \frac{\partial u_1}{\partial x_1} ) \Delta x_2 \Delta x_3   \\\\
&= \left[  \rho u_1  – ( \rho +\Delta x_1 \frac{\partial \rho}{\partial x_1} ) ( u_1 +\Delta x_1 \frac{\partial u_1}{\partial x_1} ) \right] \Delta x_2 \Delta x_3  \\\\
&= – \left[  \rho \Delta x_1 \frac{\partial u_1}{\partial x_1} + u_1 \Delta x_1 \frac{\partial \rho}{\partial x_1} + \Delta x_{1}^2 \frac{\partial \rho}{\partial x_1}\frac{\partial u_1}{\partial x_1}) \right] \Delta x_2 \Delta x_3  \\\\
&= – \left[  \rho \frac{\partial u_1}{\partial x_1} + u_1  \frac{\partial \rho}{\partial x_1} + \Delta x_1 \frac{\partial \rho}{\partial x_1}\frac{\partial u_1}{\partial x_1} \right]\Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3  \\\\
\tag{3} \label{eq:scale-factor-3} 
\end{align}
$$

ここで、考えるべきことがあります。Taylor展開の時は2次以降の\(\Delta x_{1}^2\)の項を無視したくせに、ここでは残すのかと。辻褄を合わせるために、\(\Delta x_{1}^2\)がかかった項は消すべきです。

また、他の方向も同じように求めらます。

$$
\begin{align}
&M_{x_1} =- (  \rho \frac{\partial u_1}{\partial x_1} + u_1  \frac{\partial \rho}{\partial x_1} ) \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3  \\\\
&M_{x_2} =- (  \rho \frac{\partial u_2}{\partial x_2} + u_2  \frac{\partial \rho}{\partial x_2} ) \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3  \\\\
&M_{x_3} =- (  \rho \frac{\partial u_3}{\partial x_3} + u_3  \frac{\partial \rho}{\partial x_3} ) \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3
\tag{4} \label{eq:scale-factor-4} 
\end{align}
$$

したがって、質量変化は次のように表せるはずです。

$$
\begin{align}
\frac{ \partial \rho \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3}{ \partial t} &= M_{x_1} +M_{x_2}+M_{x_3}  \\\\
&=- \left[ \rho (\frac{\partial u_1}{\partial x_1} +\frac{\partial u_2}{\partial x_2} +\frac{\partial u_3}{\partial x_3} ) + u_1  \frac{\partial \rho}{\partial x_1} + u_2  \frac{\partial \rho}{\partial x_2} + u_3  \frac{\partial \rho}{\partial x_3} \right] \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3  \\\\
&=- \left[ \frac{\partial \rho u_1}{\partial x_1} +\frac{\partial \rho u_2}{\partial x_2} +\frac{\partial \rho u_3}{\partial x_3}  \right] \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3
\tag{5} \label{eq:scale-factor-5} 
\end{align}
$$

途中、積の微分でまとめています。これはまとめられるんですねー。そしてこれはテンソル表記でもっと端的に書けそうです。両辺\(\Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3\)で割って、テンソル表記にすると、

$$
\begin{align}
\frac{ \partial \rho }{ \partial t} &=- \frac{\partial \rho u_i}{\partial x_i}
\tag{6} \label{eq:scale-factor-6} 
\end{align}
$$

綺麗ですねー。綺麗に書けました。これを移行したものが流体の質量保存則です。簡単ですね。

$$
\begin{align}
\frac{ \partial \rho }{ \partial t} + \frac{\partial \rho u_i}{\partial x_i} =0
\tag{7} \label{eq:scale-factor-7} 
\end{align}
$$


非圧縮性verにする

ここで、狭義の非圧縮性条件を課します。密度ρ : 一定という条件です。すると、非圧縮性における流体の質量保存則が導けます。

$$
\begin{align}
&\quad \frac{ \partial u_i }{ \partial x_i}=0 \tag{8} \label{eq:scale-factor-8} 
\end{align}
$$

とりあえずできました。しかし、この式と、密度ρ:一定というのは、元々の質量保存則に対する必要十分条件ではありません。元に戻せませんし。そこで、本当の非圧縮性の条件を考えてみます。少し展開します。

$$
\begin{align}
\frac{ \partial \rho }{ \partial t} + u_i \frac{\partial \rho}{\partial x_i} + \rho \frac{\partial u_i}{\partial x_i} =0
\tag{9} \label{eq:scale-factor-9} 
\end{align}
$$

この時、前半の2つの項。どこかでみたことないでしょうか?

うーん。うーん。

全微分??

そうです、全微分です。

$$
\begin{align}
\frac{Df}{Dt} &= \frac{\partial f}{\partial x} \frac{\partial x}{\partial t} +\frac{\partial f}{\partial y} \frac{\partial y}{\partial t} +\frac{\partial f}{\partial z} \frac{\partial z}{\partial t} +\frac{\partial f}{\partial t}  \\\\
&=\frac{\partial f}{\partial x} u +\frac{\partial f}{\partial y}v+\frac{\partial f}{\partial z} w +\frac{\partial f}{\partial t} \\\\
&=\frac{\partial f}{\partial t} + u_1 \frac{\partial f}{\partial x_1} +u_2 \frac{\partial f}{\partial x_2}+u_3 \frac{\partial f}{\partial x_3} \\\\
&=\frac{\partial f}{\partial t} + u_i \frac{\partial f}{\partial x_i}
\tag{10} \label{eq:scale-factor-10}
\end{align}
$$

これです。fをρに変えたら、そっくりですね。

よって、非圧縮条件というのは、以下のものだと分かります。

$$
\begin{align}
\frac{D \rho}{Dt} &= \frac{\partial \rho}{\partial t} + u_i \frac{\partial \rho}{\partial x_i} = 0
\tag{11} \label{eq:scale-factor-11}
\end{align}
$$

これが意味するのはどのようなことなのでしょうか?全微分はLagrange的な視点の時に使うと言いました。解釈すると、密度が流れに沿って一定という条件になります。流れに沿ってと行くとその流線上は元々の流体と同じ流体のはずです。分布はあってもいいです。しかし、同一流線上、Aの部分から流体が流れてきて、流れに運ばれてBに辿り着いたとして、AからBの間で密度が一定であればいいということです。

これが非圧縮条件です。密度の全微分が0。

結局、\eqref{eq:scale-factor-8}式が非圧縮性流体における質量保存則です。

思いの外シンプルな理論です。簡単(のはず)です。



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