流体の運動量保存則(3) 次は面積力

非圧縮性流体

運動量保存則

引き続き、流体の運動量保存則とはどのようなものになるかを考えていきます。

前回同様、面積力を\(f_{s_i} \)、体積力を\(f_{v_i} \)として、運動量保存則は以下のように書けるのでした。

$$
\begin{align}
&\frac{ \partial \rho u_i \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3}{ \partial t} =- \frac{\partial \rho u_i u_j}{\partial x_j} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 +f_{v_i} + f_{s_i} \\\\
\tag{1} \label{eq:scale-factor-1} 
\end{align}
$$

前回体積力は導いたので、今回は面積力についてやっていきます。\(f_{s_i} \)の単位は前回やったように[N]です。

まず、面積力は面にかかる力なので、2階のテンソルで表さざるを得ません。この辺でどうせテンソル表記を使わないといけないので、テンソル表記をしてきた節もあります。単純に好みもありますけどね。

まず、面の方向(3成分)と力の方向(3成分)で表すことを考えます。

この時の面積力を\(\tau_{ij}[N/m^2]\)とし、iのところに面の方向、jのところに力の方向を入れます。
テンソル表記として、どっちが先に面の方向でも力の方向でもいいのですが、このサイトの表記では面の方向を先に書きます。

そして、なんどもやっている通り、Taylor展開で表現します。すると、こうなるでしょう。

何個かかけずに省きましたが、イメージはできたかと思います。このような形で2階のテンソルを表記します。


応力について

応力\(\tau_{ij} \)の単位を考えてみます。まず、応力の単位というのは[N/㎡]=[Pa]です。これは、当然ですよね。圧力も応力の一つなのですから。面に対してかかる力を(力/面積)で表すのはごく自然なことです。応力には基本的に2種類あります。法線応力(normal stress)とせん断応力(shear stress)です。法線応力とは、いわゆる圧縮・引張の力で、法線方向に働くからそう呼ばれています。\(\tau_{11}\)とか、\(\tau_{22}\)とかがこれに当たります。圧力も法線応力の一つです。せん断応力は、面に対してズラすように働く力で、\(\tau_{12}\)とか\(\tau_{13}\)とか\(\tau_{31}\)とかがこれに当たります。

少し余談ですが(重要な)、流体では圧力以外に代表的な法線応力が一つあります。なんでしょう?

 

速度変化による力です。流体力学の重要な定理にベルヌーイの定理というものがあります。式で書くとこんな感じです。

$$
\begin{align}
&P + \frac{1}{2}\rho v^2 + \rho g Z=const  \\\\
&(静圧) + (動圧) + (位置圧) = 一定
\tag{2} \label{eq:scale-factor-2} 
\end{align}
$$

という法則です。流体の超重要定理です。基本的に非圧縮流体で成り立ちますが、圧縮流体でも非圧縮と近似できる場合は成り立ちます。

何を言っているか理解していきましょう。まず、静圧というのは、一般的にイメージする圧力とだいたい同じものです。流体が動いていない時に働く圧力と言ってもいいでしょう。ただし、今回は位置圧が入っているので、そこから位置圧を引いてあるものです。位置圧というのは、大気圧や静水圧のように単純にその地点の上の流体の重さが圧力となっているものを言います。静圧は、例えば気体が膨張したりして起きているものを指していて、外の大気であれば0です。静圧は位置圧からの差と言ってもいいでしょう。動圧は、流体が動いているという現象を圧力と同じ単位として表したものです。圧力という力が働いている訳ではありません。そして、静圧と動圧はあたかも位置エネルギーと運動エネルギーが変化しあうような形で変化します。動圧は運動エネルギーにすごく似ていますね。

ベルヌーイの定理が言っていることは、単純です。これらの和が一定に保たれる。つまり、同じ位置圧の場所で、もし流体が動けば、その分圧力(静圧)は下がります。動いている流体がブレーキがかかって止まれば、動いていた分の動圧が静圧に代わり、圧力(静圧)が上がります。

これは当たり前のことで、例えば風が壁に当たって流速が落ちると、その分その点の圧力が上がって風から圧力として力を感じるよということです。

話が戻りますが、つまり速度変化による力というのはつまりは圧力です。ベルヌーイの定理によって変わる圧力です。

さらに余談になってしまいますが、飛行機が飛ぶ理由というのも基本的にベルヌーイの定理から説明できます。ベルヌーイの定理から説明できないとか言ってる人もいますが、ベルヌーイの定理で説明できます。

話が脱線するので、別の機会に書きますが、簡単に言うと、飛行機の翼の上側の速度が下側の速度よりも速くなります。速度が速い方がベルヌーイの定理により圧力が低いので、その分上に吸い上げられます。そして揚力を生みます。まあ、なぜ上の方が速くなるかには複雑な理論があり、いずれ書きます。

さらに余談ですが、揚力と言うのは、上に働く力ではなく流れに対して垂直方向に働く力を揚力といいます。なので、飛行機が浮く力も揚力ですが、建物に風が通りすぎて、風は常に変動しているので建物のどっちかの面が速くなって、それが交互に起きて横に揺れる、といった現象も揚力によるものです。風によって建物が揺れるのは基本垂直方向で、揚力(lift force)によるものなんですね。

逆に流れと同じ方向にかかる力を抗力(drag force)と言います。

すごく脱線しましたが、話を戻します。応力の単位、\([N/m^2]\)は面白い単位で、ちょっと考えてみましょう。

$$
\begin{align}
&\frac{N}{m^2} =  \frac{kg \cdot m/s}{m^2 \cdot s}
\tag{3} \label{eq:scale-factor-3} 
\end{align}
$$

と変形できますよね。これで別名応力は運動量flux(フラックス)と呼ばれています。fluxと言うのは、流束と書きますが、面積あたり・時間あたりの物理量のことです。他に例をあげると、発熱[W/㎡]は、

$$
\begin{align}
&\frac{W}{m^2} =  \frac{J}{m^2 \cdot s}
\tag{4} \label{eq:scale-factor-4} 
\end{align}
$$

こうもかけます。熱を面積あたり、時間あたりで与えていると言う意味で、「熱流束」「熱flux」とか呼ばれるものです。

そう考えると、応力=運動量fluxは、時間あたり・面積あたりで運動量を供給するものとも捉えることができます。応力の輪郭が見えてきます。すごく重要な考え方なので、頭の片隅に残しておいてください。

 


対称テンソルについて

ここで一つ、証明しておかなければならないことがあります。対称テンソルは微小体積において等しいと言う概念です。式で言うと、

$$
\begin{align}
&\tau_{ij} = \tau_{ji}
\tag{5} \label{eq:scale-factor-5} 
\end{align}
$$

と言うものです。これが微小体積の時には成り立ちます。

まず、例として、1と3方向で考えてみます。応力は下のようになっているでしょう。

ここで、

$$
\begin{align}
&\tau_{11}’ = \tau_{11} + \Delta x_1 \frac{\partial \tau_{11}}{\partial x_1} \\
&\tau_{13}’ = \tau_{13} + \Delta x_1 \frac{\partial \tau_{13}}{\partial x_1} \\
&\tau_{31}’ = \tau_{31} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{31}}{\partial x_3} \\
&\tau_{33}’ = \tau_{33} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{33}}{\partial x_3} \\
\tag{6} \label{eq:scale-factor-6} 
\end{align}
$$

ここで、左下の点周りのモーメントを考えます。微小な直方体は連続体の中で静止しているはずなので、モーメントは0になります。よって、

$$
\begin{align}
&\frac{\Delta x_1}{2} (\Delta x_1 \tau_{33}’ – \Delta x_1 \tau_{33} – \frac{\Delta x_3}{2} (\Delta x_3 \tau_{11}’ – \Delta x_3 \tau_{11}) – \Delta x_3 \Delta x_1 \tau_{31}’ + \Delta x_1 \Delta x_3 \tau_{13}’ =0 \\\\
&\frac{\Delta x_1^2}{2} \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{33}}{\partial x_3} \ – \frac{\Delta x_3^2}{2} \Delta x_1 \frac{\partial \tau_{11}}{\partial x_1} \ – \Delta x_3 \Delta x_1 (\tau{31} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{31}}{\partial x_3} ) + \Delta x_1 \Delta x_3 (\tau{33} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{33}}{\partial x_3})=0 \\\\
&両辺を\Delta x_1 \Delta x_3で割ると、 \\\\
&\frac{\Delta x_1}{2} \frac{\partial \tau_{33}}{\partial x_3} \ – \frac{\Delta x_3}{2} \frac{\partial \tau_{11}}{\partial x_1} \ – (\tau{31} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{31}}{\partial x_3} ) + (\tau{33} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{33}}{\partial x_3})=0 \\\\
&(\tau_{33} – \tau_{31}) + \frac{\Delta x_1}{2} \frac{\partial \tau_{33}}{\partial x_3} \ – \frac{\Delta x_3}{2} \frac{\partial \tau_{11}}{\partial x_1} \ –  \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{31}}{\partial x_3} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{33}}{\partial x_3} =0 \\\\
&ここで、微小体積より、\Delta x_1, \Delta x_3 \rightarrow 0の極限をとると、 \\\\
&\tau_{13} = \tau_{31}  \\\\
&全方向で同様に考えると、\tau_{ii} = \tau_{ii}は当然なのを加味して、 \\\\
&\tau_{ij} = \tau_{ji}
\tag{7} \label{eq:scale-factor-7} 
\end{align}
$$

これで、微小体積の対称テンソルは等しいことが示せました。
本当は中心のモーメントを考えると、法線応力はいらないのでもっとするっとできたはずなのですが、これでやってしいました。しょーがない。自分でやってみてください。


応力での表現

やっとこさここから、\(f_{s_i} \)を導いていきます。

ここから、まずは力が1方向のものだけで、\(f_{s_1}\)を考えます。すると、

$$
\begin{align}
f_{s_1} &= (\tau_{11} + \Delta x_1 \frac{\partial \tau_{11}}{\partial x_1} )\Delta x_2 \Delta x_3 – \tau_{11} \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
&+ (\tau_{21} + \Delta x_2 \frac{\partial \tau_{21}}{\partial x_2} )\Delta x_1 \Delta x_3 – \tau_{21} \Delta x_1 \Delta x_3 \\\\
&+ (\tau_{31} + \Delta x_3 \frac{\partial \tau_{31}}{\partial x_3} )\Delta x_1 \Delta x_2 – \tau_{31} \Delta x_1 \Delta x_2 \\\\
&= \frac{\partial \tau_{11}}{\partial x_1} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 + \frac{\partial \tau_{21}}{\partial x_2} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 +\frac{\partial \tau_{31}}{\partial x_3} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
&= \frac{\partial \tau_{j1}}{\partial x_j} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
& 他の方向も同様に考えて、 \\\\
&f_{s_i}= \frac{\partial \tau_{ji}}{\partial x_j} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
& \tau_{ji} = \tau_{ij}より、\\\\
&f_{s_i}= \frac{\partial \tau_{ij}}{\partial x_j} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
\tag{8} \label{eq:scale-factor-8} 
\end{align}
$$

これで面積力による力を導き出すことができました。

さらに、\eqref{eq:scale-factor-1}式の中に前回の体積力も合わせて入れてやります。

$$
\begin{align}
&\frac{ \partial \rho u_i \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3}{ \partial t} =- \frac{\partial \rho u_i u_j}{\partial x_j} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 + \frac{\partial \tau_{ij}}{\partial x_j} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3  – \rho g \delta_{i3} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
&両辺\Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3で割って、 \\\\
&\frac{ \partial \rho u_i }{ \partial t} =- \frac{\partial \rho u_i u_j}{\partial x_j} + \frac{\partial \tau_{ij}}{\partial x_j}  – \rho g \delta_{i3}
\tag{9} \label{eq:scale-factor-9} 
\end{align}
$$

できました。この式が流体の運動量保存則です。しかし、\(\tau_{ij}\)の具体的な形が分からないので、次回からそれをモデリングしていきます。



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