流体の熱エネルギー保存則(2) 熱エネルギー保存則の導出

非圧縮性流体

熱エネルギー保存則

前回で「非圧縮非等温流体」の運動量保存則に修正しました。一応書いておきます。

$$
\begin{align}
&\frac{ \partial u_i }{ \partial t} + \frac{ \partial u_i u_j }{ \partial x_j} = -\frac{1}{\rho} \frac{\partial P}{\partial x_i} + \nu \frac{\partial^2 u_i}{\partial x_j^2} + g\beta \Delta T \delta_{i 3} \tag{1} \label{eq:scale-factor-1}
\end{align}
$$

次に熱エネルギー保存則を考えます。運動量保存則と同じです。

$$
\begin{align}
&\frac{ \partial \bigcirc }{ \partial t}  \tag{2} \label{eq:scale-factor-2}
\end{align}
$$

に入るものを考えます。熱エネルギー保存則なので、[J]の保存を考えるのが自然でしょう。いきなりTとかで考えるのは無理です。よって、[J]を作ってみます。

$$
\begin{align}
& \hspace{45pt} 定圧比熱 \hspace{11pt} 密度 \hspace{11pt} 温度  \\\\
&\Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \hspace{15pt} C_p \hspace{20pt} \rho \hspace{20pt} T  \\\\
& \hspace{15pt} [m^3] \hspace{10pt} [J/kg \cdot K] \hspace{3pt} [kg/m^3] \hspace{3pt} [K]
\tag{3} \label{eq:scale-factor-3}
\end{align}
$$

これでできそうです。

なぜ、定圧比熱なのでしょうか?定積比熱を使わないのでしょうか?これはなかなか深入りすると難しい問題なのですが、まず圧力は流体中で拡散していくのでほぼ全体で同じくらいの圧力と考えても大丈夫です。そして、境界で外部から流体が出たり入ったりするので、定積で考えるより定圧で考えるのがふさわしい、とこれくらいで許してください。

僕もこの辺なぜ定圧なのかについては、完全に理解できてないので意見あればコメントください。

ここで、割と覚えておくと良いものがあります。

\(C_p T\)が作れますが、これはなんでしょうか?

 

熱力学によく出てきますね。

$$
\begin{align}
& C_p  = \frac{1}{n} \Bigl( \frac{\partial H}{\partial T} \Bigr)_p\\\\
& n=1として \\\\
& H = C_p T
\tag{4} \label{eq:scale-factor-4}
\end{align}
$$

つまり、エンタルピーです。覚えておくといいです。

$$
\begin{align}
& \frac{\partial (C_p \rho T  \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3)}{\partial t}
\tag{5} \label{eq:scale-factor-5}
\end{align}
$$

を考えていきます。

 


移流項

移流項は全く今までと同じです。運ばれるものを考えて、同じようになるでしょう。

$$
\begin{align}
質量保存則 : & \frac{\partial u_j \ \  \overbrace{\rho \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3}^{運ばれるもの} }{\partial x_j} \\\\
運動量保存則 : & \frac{\partial u_j \ \ \overbrace{\rho u_i \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3}^{運ばれるもの}}{\partial x_j} \\\\
熱エネルギー保存則 : & \frac{\partial u_j \ \ \overbrace{C_p \rho T \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3}^{熱量}}{\partial x_j} \\\\
\tag{6} \label{eq:scale-factor-6} 
\end{align}
$$

これで、移流項は完成です。流体中なので、流れによって運ばれる、移流の影響は常にあります。
ちゃんと導出する方法は、今までと全く同じですので、やってみてください。

他に熱で影響を及ぼす成分を考えていきます。まず、拡散はあるはずです。完全に流体が止まっていても、熱伝達して熱は伝わっていきます。

他にも、ストーブのような熱を与え続けるものもあるでしょう。熱の生産です。

あと、放射も考えられます。しかし、放射は基本的に流体中は考えません。都市とかそういった大きいスケールを考える時は考えることはあります。現象としては存在します。大気放射を考えればあります。もし考慮する場合は、放射は別に考えて連成解析をします。


熱の拡散

熱の拡散を考えていきます。熱伝達による拡散には、フーリエの法則というものがあります。

$$
\begin{align}
& q_1 = \ – \lambda \frac{\partial T}{\partial x_1}
\tag{7} \label{eq:scale-factor-7}
\end{align}
$$

マイナスが付いていることに注意してください。圧力のところでもありましたが、温度勾配と熱が流れる向きが逆なのです。

よって、今までと全く同じように、それぞれの方向で拡散を求めていきましょう。

$$
\begin{align}
\Delta Q_{x_1} & = q_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \ – \Bigl( q_1 + \Delta x_1 \frac{\partial q_1}{\partial x_1} \Bigr) \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
& = \ – \frac{\partial q_1}{\partial x_1} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
\Delta Q_{x_2} & = \ – \frac{\partial q_2}{\partial x_2} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
\Delta Q_{x_3} & =  \ – \frac{\partial q_3}{\partial x_3} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
\tag{8} \label{eq:scale-factor-8}
\end{align}
$$

あとは全部足して、

$$
\begin{align}
\Delta Q & = \Delta Q_{x_1} + \Delta Q_{x_2} + \Delta Q_{x_3} \\\\
& =  \ – \frac{\partial q_j}{\partial x_j} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
& = \ – \frac{\partial }{\partial x_j}\Bigl( – \lambda \frac{\partial T}{\partial x_j} \Bigr) \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3 \\\\
& = \ + \lambda \frac{\partial^2 T}{\partial x_{j}^{2}} \Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3
\tag{9} \label{eq:scale-factor-9}
\end{align}
$$

これでできました。あとは、両辺を\(\Delta x_1 \Delta x_2 \Delta x_3\)で割ってやって、熱の与え続ける項の、生産項を\(S\)として加えれば熱エネルギー保存則の完成です。

$$
\begin{align}
\frac{\partial C_p \rho T}{\partial t} = \ – \frac{\partial u_j C_p \rho T}{\partial x_j} + \lambda \frac{\partial^2 T}{\partial x_{j}^{2}} + S
\tag{10} \label{eq:scale-factor-10}
\end{align}
$$

最後の、非圧縮条件で、\(C_p\) と\(\rho\)を一定として割ってあげます。

$$
\begin{align}
& \frac{\partial T}{\partial t} = \ – \frac{\partial u_j  T}{\partial x_j} + \alpha \frac{\partial^2 T}{\partial x_{j}^{2}} + S’ \\\\
& \alpha = \frac{\lambda}{C_p \rho} [m^2/s]
\tag{11} \label{eq:scale-factor-11}
\end{align}
$$

これで完成です!!!
意外と簡単ですね。\(\alpha\)の単位が、\([m^2/s]\)なことだけ注意してください。と言うより、導出してみてください。

これで完成しました。Boussinesq近似による非圧縮非等温流体の基礎方程式です。

$$
\begin{align}
&質量保存則 :\hspace{ 30pt } \frac{ \partial u_i }{ \partial x_i } = 0  \\\\
&運動量保存則:\hspace{ 24pt } \frac{ \partial u_i }{ \partial t} + \frac{ \partial u_i u_j }{ \partial x_j} = -\frac{1}{\rho} \frac{\partial P}{\partial x_i} + \nu \frac{\partial^2 u_i}{\partial x_j^2} + g\beta \Delta T \delta_{i 3}  \qquad \\\\
&熱エネルギー保存則: \hspace{ 3pt }\frac{ \partial T }{ \partial t} + \frac{ \partial T u_j }{ \partial x_j} = \alpha \frac{\partial^2 T}{\partial x_j^2} + S \tag{12} \label{eq:scale-factor-12}
\end{align}
$$

ベクトル表記

$$
\begin{align}
&質量保存則 :\hspace{ 30pt } \nabla \cdot \mathbf{V} = 0  \\\\
&運動量保存則:\hspace{ 24pt } \frac{ \partial \mathbf{V}}{ \partial t} + (\mathbf{V} \cdot \nabla) \mathbf{V} = -\frac{1}{\rho} \nabla p + \nu \nabla^2 \mathbf{V} –  \beta \Delta T \mathbf{g} \qquad \\\\
&熱エネルギー保存則: \hspace{ 3pt }\frac{ \partial T }{ \partial t} + (\mathbf{V} \cdot \nabla) T = \alpha \nabla^2 T + S \tag{13} \label{eq:scale-factor-13}
\end{align}
$$

いやー、これで導出完了です!
だいたいの方程式これで導出できそうじゃないですかね?
導出が大事なのは、それぞれの項が何を指すのかが明確になるからです。また、どの辺りをモデリングしているのかもわかります。

でも、意外と簡単じゃないですか?簡単ですよね。世界はシンプルです。

でも、解くのがむずいんです・・・。奥が深い。滑らかな解の存在すら示すことができていない方程式、数学的に厳密に解けたら即フィールズ賞ものの方程式をどうやって近似して解いていくのか、とくとご覧あれ。



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